会長挨拶

第32回 スパズム・シンポジウム
会 長  糟谷 英俊
(東京女子医科大学東医療センター脳神経外科 教授)

糟谷先生

今回のStroke2016の統一テーマは、「人口転換と脳卒中-Population Transition and Stroke」となりました。2025年問題を控え、今迄に経験したことのない少産多死型社会を目前とし、まさに時宜を得たテーマであると思います。これを念頭に、私の頭をよぎったのは、年齢とスパズムの関係です。これまでいくつも論文がありますが、見解が二分するように思います。ここで決着をつけて、今後の診療に役立てるため、スパズム・シンポジウムのテーマを、「スパズムに年齢因子は関与するか?」とさせていただきました。一方、くも膜下出血患者においては、高齢者の機能予後は悪いというevidenceが積み重ねられてきました。「高齢くも膜下出血患者の治療と限界」としてもシンポジウムを組みたいと考えます。

1985年第1回スパズム・シンポが大阪で開催された当初は、スパズムという不思議な現象をなんとか解き明かそうと、日本中の脳神経外科医によって熱のこもった議論がされていました。脳主幹動脈の狭窄・スパズムは、現在でもその発症メカニズムの詳細が解明できず、動物実験では有効な治療薬も治験となるとその効果は期待できず、実験モデルに比較的大きな動物を使わねばならないことなどもあって、今ではその研究は、どこかに追いやられてしまっている印象を持ちます。一方、脳主幹動脈病変以外のいろいろな要素が遅発性の脳虚血に関連することが明らかとなってもきました。しかし、患者さんの機能予後に最も関係するのは、脳主幹動脈の狭窄つまりはスパズムによる脳梗塞であることに変わりはありません。今、まさに原点であるEckerとRiemenschneider(J Neurosurg8:660-667,1951)に帰るべき時ではないかとも考えております。現在、脳主幹動脈にスパズムが起こった場合の治療は、脳血管内治療が主流になりつつあります。そこで、「スパズムが起こった時のレスキュー治療」と「スパズム時期に診断された破裂脳動脈瘤の治療」もシンポジウム形式としたいと考えております。

9月に軽井沢で開催されます、Vasospasm2015 13th International Conference on Neurovascular Events after Subarachnoid Hemorrhageでの成果を、今回のスパズム・シンポジウムに盛り込みつつ、本シンポジウムにおいて、発足当時のような、熱のこもった議論がされることを期待しております。今回はポスターセッションも充実させたいと考えておりますので、症例報告を含む多くの演題の登録をお願いいたします。